研究課題
本研究課題は、多様な状況に依存する行為の理解に向けて,日常行為のダイナミクスを動作解析等により検討するものである。平成22年度は、書字行為の検討を行った。リハビリテーションにおいて、身体のある部位に損傷や麻痺を負った場合に、その部位が担っていた機能を他の部位によって行うということはしばしば起こり得る。この実験では字を書くというきわめて基本的な日常行為について、頸椎損傷の後遺症で手足に麻痺を抱える患者が、口で字を書く行為をどのように達成しているのかを、動作解析を用いて定量的に検討した。実験の結果、同じ字を書く複数回の試行において、関節角度群の変動が、ある特定の変数(筆圧)に影響を与えないような補償的に結びついた領域(Uncontrolled Manifold)内での変動であることが示された。また筆と紙が非接触の時点と接触している時点という二つの局面において、後者においてのみ関節角度群の変動が筆管と紙面の角度に影響を与えないような補償的な協調が見られるという結果が得られた。これらの結果は、書字行為が運動プログラムのようなものの発現ではなく、外部との何らかの関係を保つような複数の運動要素間の協調関係の形成によって制御されていることを示唆するものだった。この研究は、平成23年7月に行われる国際学会The 16th International Conference on Perception and Action(知覚と行為の国際会議)にて口頭発表として採択された。
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Human Movement Science
巻: 印刷中 ページ: doi:10.1016/j.humov.2010.08.013
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巻: 印刷中
http://www.kiui.ac.jp/~nonaka_t/