研究概要 |
行動遺伝学では本来,表現型の個人差に対して相加的遺伝,非相加的遺伝,共有環境,非共有環境の4つの要因が影響していることが仮定されている。しかし,数理的制約によりこのうちの3要因までしか同時には推定可能ではなかった。今年度は,この数理的制約を高次積率を用いた構造方程式モデリングによって克服することに成功し,国際的な学術雑誌に成果が発表された(Ozaki, K., Toyoda,H., Iwama,N., Kubo,S., & Ando,J., 2011)。この成果については,2010年の日本心理学会でも発表を行った。また,双生児研究でも使用されるマルチレベルモデルを高次積率を用いた構造方程式モデリングの枠組みで表現することにも成功し,論文として発表された(尾崎・中村・室橋,2010)。さらに,Ozaki, K., Fujisawa, K.Keiko., Yamagata, S., Takahashi, Y., Sasaki, S., Shikishima, C., & Ando, J.(2010)では,4要因の同時推定モデルに対して遺伝環境交互作用モデルを組み込むことにも成功した。これにより,与えらえた環境によって,各4要因の表現型に与える影響が異なるという現象を記述することが可能になった。2010年度の日本行動計量学会においては企画セッション「行動遺伝学の新展開」をオーガナイズし,行動遺伝学における最先端の知見を発表し議論する場を設けた。
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