研究概要 |
1.脳卒中患者を対象とした下腿三頭筋の筋形状の定量:脳卒中患者13名を対象として,下腿三頭筋各筋の筋形状の測定を行った.被検者は股関節及び膝関節角度90度屈曲の椅座位をとり,足関節を筋力計のフットプレートに固定された.筋形状の指標として下腿三頭筋各筋の筋束長,羽状角を麻痺側と健側について超音波法で測定した.その結果,全ての筋で筋束長と羽状角について麻痺側で有意な減少がみとめられた. 2.脳卒中患者を対象とした下腿三頭筋の力学的特性の定量:足関節の受動背屈を底屈20度から背屈20度までの範囲で毎秒5度で行い,下腿三頭筋各筋の画像を30Hzで撮像した.同一の足関節角度変化に対する受動トルクは有意な交互作用がみられた.また,筋束長変化については腓腹筋では内側頭,外側頭ともに二群間で有意な交互作用がみられたが,ヒラメ筋では二群間で有意な交互作用はみられなかった.このことから,(1)下肢麻痺患者では受動的な関節運動の際に受動トルクが高くなること,(2)麻痺によりヒラメ筋よりも腓腹筋の方が伸びにくくなることが示された. 3.ストレッチング方法の違いが足関節のスティフネスに与える影響:6名を対象として異なるストレッチング方法が足関節スティフネスに及ぼす影響について検討した.ストレッチング方法は静的なストレッチングを模したものと,動的なストレッチングを模したものの2種類であった.静的なストレッチングを模した試行では10分間,一定の背屈角度で足関節を固定した.一方,動的ストレッチングを模した試行では,4秒間に1回足関節角度90度(解剖学的正位)から,予め決定していた足関節角度まで100deg/sで行う足関節背屈を10分間継続した.その結果,足関節スティフネスは静的なストレッチングを模した試行の方が,動的なストレッチングを模した試行よりも減少率が大きかった.
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