研究概要 |
1.目的 本研究は,北日本における斜面や周辺に分布する段丘を対象に,ルミネッセンス年代測定法を適用し高分解能な編年を目的とする. 2.内容 1)新たなルミネッセンス年代測定法の適用の試み:ルミネッセンス年代測定法は堆積物中の鉱物の最終露光年代を求める手法であるため,年代資料が見つからない地域においても高分解能に編年を行うことができる.一方で,現在一般化している石英のOSL年代測定法は,約200Gy(北日本の場合,約7万年前)で信号が飽和する.そこで本研究では,より古い堆積物の年代測定が可能な最新のルミネッセンス年代測定法である長石のpIRIR年代測定法をも適用する.そこで本研究ではまず,pIRIR年代測定法の適用の可否を確認するために,本州北部において風成堆積物を採取し,pIRIR年代測定を行った.その結果,独立年代指標とpIRIR年代値はよく一致することが明らかとなった.2)北海道における段丘・斜面・沖積層の編年:北海道南西部,遊楽部川流域の河成段丘では,MIS6,4,<2に形成された段丘面の形成年代を直接年代値によって明らかにした.北海道北部の利尻島では,東麓の扇状地面がおよそ1.5万年前頃に形成したことが明らかとなった.クッチャロ湖周辺の沖積低地では基底礫層が約12kaに堆積したと判断された.隣接する宗谷丘陵北部では,ソリフラクション堆積物を切る斜面構成物質がそれぞれ約16ka,13kaという年代値を示した。 3.意義・重要性これらの新たな多点・高分解能な年代値に基づき,本研究の対象地域では12~13ka前後に河川流量が増加し,河成段丘や沖積低地下位の埋没谷が形成されたことが絶対年代に基づき明らかとなった.あわせて,pIRIR年代測定法を適用することにより,中期更新世以降の高分解能な地形発達史の解明が可能であることが明らかとなった.
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