多くの癌は、自己複製、分化、増殖能を有する癌幹細胞と呼ばれる一部の細胞集団によって維持されていると考えられており、癌幹細胞は、化学療法などの治療に対して耐性を有していることより癌の再発の原因であることが多く報告されている。しかしながら、その癌幹細胞を標的とした有効な治療薬がなく発見が急がれている。そこで、本研究では、細胞株と比較してより病態を反映している患者癌組織を用いて、癌組織から癌幹細胞だけを取り出すことが可能であるレーゼーマイクロダイセクション技術と微量な抗原があれば迅速に抗体を単離することが可能な抗体ファージディスプレイ技術および次世代質量分析計を用いた微量タンパク質同定技術の3つの手法を用いることで癌幹細胞の新規バイオマーカー候補を探索し、同時に抗体を単離することを試みた。 まずは、乳癌および大腸癌の患者組織の凍結組織を、クライオスタットを用いて5umの厚さに切片化を行い、抗CD133と抗ALDH、抗CD44と抗ALDHの組み合わせを用いて癌幹細胞の蛍光ラベル化を行った。その後、蛍光ラベル化した乳癌、大腸癌組織全体にマウス抗体ファージライブラリを反応させ、反応後レーザーマイクロダイセクション技術により癌幹細胞とその細胞に結合しているマウス抗体ファージの回収を行った。今後は、この操作を数回繰り返して、癌幹細胞に強く結合する抗体ファージの単離を行っていく。 この技術は、癌幹細胞の新規バイオマーカーの探索および抗体医薬の研究において新時代をもたらす重要な技術になりえることが考えられるとともに有用なバイオマーカーの候補の発見に期待がもてる。
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