本研究の目的は、再生可能資源(森林および水)のストック量に関する理論モデルの構築、そしてその構造モデルを用いた再生可能資源のストック量の要因分析(および将来予測)である。平成22年度は理論モデルを構築し、その理論モデルから導かれた帰結のうちの一部を実際の森林データを用いて検証している。 具体的には、まず開放経済における天然資源開発の理論モデルを構築し、その帰結として以下の五つの結果を得ている。一つ目は、資本と資源の初期ストック量に依存して、持続的成長経路に乗るか、天然資源に特化した国になるかが分かれる、というもの。二つ目は、いずれの国の場合も、天然資源のストック量が収束し、その収束先のストック量は持続的成長経路のほうが小さい、というもの。三つ目は、持続的成長経済では、ある時点で天然資源からの生産物は輸出財から輸入材に変わる、というもの。四つ目は、生産物価格の上昇は途上国が天然資源に特化する傾向を強める、というもの。五つ目は持続的成長経路に乗った国では、生産物価格の上昇は資本蓄積のスピード、したがって、経済成長のスピードを速めるものの、天然資源が輸出財から輸入材に変わるタイミングは遅らせる、というものである。 なお、森林資源のストック量に関する経年データは世界食料機関(FAO)のものが一般に用いられてきているが、各国の報告による集計という方法に対してデータの信頼性の問題が指摘されてきている。その指摘を受け、FAOは現在、1990年、2000年、2005年という3年のみデータを公開しているものの、できるだけ長い期間の経年での森林ストック量のデータが必要であるため、本研究ではEOS-Websterで公開されている地理情報システムデータをもとに、世界各国の過去100年にわたる森林ストック量のデータを構築した。このデータを用いて、理論モデルからの帰結のうち最初の二つまでの実証的検証を終えている。
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