本研究の目的は経済のグローバル化が経済および環境に与える影響を明らかにすることにある。今年度はまず、森林に関して貿易自由化が森林資源量に及ぼす影響に関する検証を行った。その結果、貿易の自由化は途上国においては森林資源を減少させるが、先進国においては森林資源を逆に増大させる効果を持つことが明らかになった。このことは、すでに森林資源の減少が問題となっている途上国において経済のグローバル化が森林減少をさらに悪化させることを意味している。したがって、自由貿易において先進国は途上国に対して何らかの補償をしていく必要もあると言えるのではないだろうか。次に、水資源利用量に関して、貿易の自由化が及ぼす影響を検証している。その結果、1%の貿易自由化は世界平均で水利用量を2.8%減少させることが明らかになった。一方で水不足は経済成長を鈍化させることも統計的に明らかとなった。以上より、経済のグローバル化は水資源に関しては世界平均では良い影響を持つことが明らかになった。研究の成果は森林に関しては"The effect of trade openness on deforestation: empirical analysis for 142 countries"という題目で国際誌への掲載が決まっている。一方の水研究に関しては現在国際ジャーナルへ投稿中であり、掲載は決まっていない。また、将来の水利用量について将来予測を行うために、重力モデルを用いて農産物の輸出量に関する推計を行い、農産物の将来輸出量とバーチャルウォーターデータを用いて、将来の貿易に関係する農業用水のシミュレーションを行った。分析の結果、貿易の自由化によって将来の貿易に関係する水使用量は増大することが明らかとなった。この将来予測の研究についても現在国際誌へ投稿中である。
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