本年度はシングルリード量子ドット構造の試料作製、低速および高速電気信号を用いる測定系の構築、シングルリード量子ドット試料の測定の開始を行った。 シングルリード量子ドット構造の試料作製では、シングルリード量子ドットがホールバーと結合した構造、量子細線と結合した構造、2重から5重の多重シングルリード量子ドット構造を電子線リソグラフィーの手法を用いて作製した。まずこれらの作製した試料を用いて、GaAs/AlGaAsヘテロ基板中の2次元電子ガス特性、金属ゲート電圧の操作に伴う空乏領域の変化、各量子ドットにおいて少数電子状態を実現するために必要な金属ゲート電極配置等の評価を行った。そして測定より得られた情報を元に、試料構造の最適化を行い、試料を改良した。これにより本研究で必要な特性を持つ試料を得ることが可能となった。 測定系の構築においては、まず直流から10kHz程度の低速電気信号を用いて、試料を低ノイズで測定できるシステムを構築した。具体的には、冷凍機中の測定配線の整備、低温部のフィルタの作製、室温部のスイッチボックス、電子回路等の作製、計測器を制御するプログラムを作成した。また高速電気信号を用いた測定系についても構築を開始し、冷凍機内への高周波用配線の導入、低温部へのアッテネータ、バイアスティーなどの高周波部品の設置を行い、20GEz程度の高速電気信号まで使用できることを確認した。さらにプログラムを改良し、高周波源、パルスジェネレータ等の高周波機器を低速信号の測定器と統合的に制御できるシステムを構成した。この新しいシステムにより、多数系での量子干渉効果の伝導測定が可能となった。 またこれらの作製した試料、および構築した測定系を用いて、シングルリード量子ドットの測定を開始した。
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