研究概要 |
本研究では,MEMS (Micro Electro Mechahical Systems)技術で作製した人工物を生物アクチュエータ(ツリガネムシ)と融合し,生物融合型MEMSデバイスを開発することを目的として実施した.得られた結果は次のとおりである. 1.流量制御素子として機能させるために,各要素を18連直列で接続する流路を作製し,安定的にツリガネムシを接着した.遊泳形態のツリガネムシを各要素(容積:約1nL)に導入した.つづいて空圧バルブで流路を閉鎖して,要素内にツリガネムシを強制的に留め,18要素に1細胞以上接着させた. 2.透膜処理後のツリガネムシの虫体を保持したまま,柄を繰り返し動作させた.1kPa以下の低圧力で溶液を導入するために,溶液導入方式を圧縮空気から静水圧に変更した.さらに空圧バルブを半閉として流路抵抗を増大させて,流速の減少により虫体の脱離を防いだ. 3.伸長液と収縮液を交互に導入し,柄を繰り返し収縮・伸長させたときの運動特性を計測した.ツリガネムシの柄は20-70μmの範囲で駆動した.要素内と要素外の領域で,柄の動作速度は変化した.ツリガネムシの収縮・伸長速さは,要素内で1μm/s,要素外で3μm/sであった. 4.作製した流路において,ツリガネムシの有無による流量評価を行った.ツリガネムシ有の流路では,柄の伸長により要素内の流体抵抗が増加し,流路出口の流量が減少した.ツリガネムシをバイオアクチュエータとして利用した流量制御の可能性を示した.
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