初年度である平成22年には、沖縄本島周辺海域を中心にした野外調査・海水採取を実施した。具体的には、都市部沿岸域および、離島域での各種栄養塩パラメータの変動把握のための定期採取を開始している。各海域から適宜採集した海水については、分光分析法を用いて解析し、硝酸・亜硝酸・アンモニウムイオン・リン酸塩濃度データを得ることができた。本年度中に得られた濃度データとサンゴ群集被度との相関性についての解析を進めた。 屋外・室内実験系におけるサンゴの栄養塩ストレスの検知については、沖縄の造礁サンゴの中でも特にストレスに弱いサンゴ種を選定するため、栄養塩負荷量で分けた複数の大型(100L)水槽を設置し、3ヶ月間の試運転ののち安定した飼育条件が確立されたことから、現在12種のサンゴを使った栄養塩影響の観測実験をおこなっている。野外では、上記の調査に加え、光・水温ロガーを設置し、各海域の環境特性把握をおこなうための準備をおこなった。 次年度の研究の準備として、病気や捕食、海綿(Terpios sp.)などによる被害のカテゴリー化を進めた。これにより野外潜水調査による多種のサンゴにおける病気の罹患動態と海域の栄養塩特性とに焦点を当てた調査研究をおこなうための準備が出来た。 これまでの蓄積データと本年度の研究から得られた成果とを合わせて、地球惑星連合大会、日本サンゴ礁学会、アジア太平洋サンゴ礁学会および同シンポジウム、海洋酸性化に関するIPCC会合サイドイベントで適宜発表をおこない、多分野研究者との議論を交わすことができた。
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