アンモニアは動植物の腐敗、排泄物の分解等によって生じる悪臭物質である。人の検知閾値は0.1ppmと非常に低く、日本国内では悪臭防止法で規定濃度が定められている(5ppm)。病院や老人ホーム、動物実験室等ではしばしばアンモニアの臭気が問題となっており、生活環境からのアンモニアの迅速な除去が求められている。本研究では固体酸の一種であるタングストジン酸を光触媒酸化チタン上に担持することで、塩基性のアンモニアやアミン等の悪臭ガスを光触媒の表面に濃縮し迅速にこれを分解する光触媒を作製することを目的とした。 平成23年は、作製した複合化光触媒のアンモニア吸着能及び光触媒活性の評価を行った。複合体上のタングストリン酸のKeggin構造は200度程度の加熱により壊れてしまうため、加熱を伴うアンモニア昇温脱離法でのアンモニア吸着量の評価は困難であった。そこで、複合体をアンモニアガスに室温で暴露し、一定時間後に光触媒上のアンモニア量を測定する方法で吸着特性を評価したところ、複合体は最大で酸化チタン単体の2.5倍のアンモニア吸着量を示すことが分かった。光触媒にアンモニアを飽和吸着させた後に反応容器内のアンモニア濃度を20ppmとしてアンモニアの分解実験を行うことで、再現性良くアンモニアの分解実験を行うことができた。容器内のアンモニアガスの減少速度は複合体と酸化チタン単体の間で大きく変わらなかったが、分解後の光触媒上の表面化学種をイオンクロマトグラフィにより調べると、表面吸着されているアンモニアの量は複合体において著しく減少していた。これらのことから、複合体の表面ではより多くのアンモニアが分解されていることが示唆された。
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