研究課題
我が国の防災対策における課題の一つは、過度の専門家依存である。本研究では、専門家と非専門家の関係論である科学技術コミュニケーション研究の知見等を援用し、この問題の解決に資する新しい防災教育のモデルとして、非専門家が専門的な防災活動へ参加する方策について理論、実践の両面から検討している。平成22年度は、専門的な防災活動への非専門家の参加のあり方についての理論的検討を中心に実施した。具体的には科学技術コミュニケーション論に関する文献を広く国内外から蒐集し、その内容について検討を開始した。ジーン・レイヴらを始祖とする正統的周辺参加論を中心に援用しつつ、専門的な防災活動への参加によって専門家と非専門家の間のコミュニケーションが行なわれ、その過程こそが防災教育そのものであることを理論的に示した。次年度は、正統的周辺参加論を基礎とした防災教育の効果について理論的検討を行なう予定である。以上の成果は、次年度以降に実施する地域でのワークショップの理論的基盤となる重要な成果であるといえる。また、理論的検討に加え、参加型の防災対策の実例として、台湾の土石流防災専員と呼ばれる、全国規模の雨量観測ボランティアについて関係者へのインタビュー調査を行った。土石流防災専員システムを運営している行政院農業委員会水土保持局の職員ならびに実際に台湾中部で防災専員を引き受けているボランティアに、運用方法や課題等に関するインタビューを行った。
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Journal of Disaster Research
巻: Vol.6,No.2 ページ: 258-270