今年度は、前年度までに「正統的周辺参加論」を援用して構築した理論に基づき、和歌山県印南町印南地区をフィールドに、地域住民らに自治体の防災担当職員と協働して津波ハザードマップを改訂する作業に関与してもらった。 津波ハザードマップの改訂作業は、全5回のワークショップ形式で実施した。 初回のワークショップでは、2012年3月に内閣府が公表した想定を元にして、地区の標高図を用いながら、印南地区を最大規模の地震、津波が襲った際の被害想定を行った。第2回ワークショップでは、2012年8月末に公表された中央防災会議の新たな被害想定を元に、前回の被害想定の見直し行った。また、住民らが作成した印南地区の被害想定をもとに、避難場所と避難ルートの検討を開始した。第3回ワークショップでは、引き続き、避難場所と避難ルートの検討を行い、負傷者等への対応方法についても検討を行った。2012年12月1日に第4回目の活動として、地震・津波を対象とした全町規模の避難訓練を実施した。町職員によれば、例年の2倍程度の参加者があったとのことであった。第5回ワークショップでは、避難訓練の振り返りを行い、避難訓練で明らかになった問題点も考慮して、2012年度版の津波ハザードマップを完成させた。 防災教育の成果を直截に評価することは困難ではあるが、次年度以降もワークショップや避難訓練を継続的に実施することが決まるなど、市民が参加する防災体制構築のための第一歩になったと考えられる。なお、ワークショップでの発言は、全て録音を行っているので、今後、その録音データを元に、ワークショップという防災教育によって、参加者がどのように変容したのかという点について詳細な分析を行う予定である。
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