本研究の目的は、ポリマーと抽出試薬を複合化することにより、より高性能な金属イオン吸着剤を開発することである。液体の抽出試薬を多孔性樹脂に浸みこませて利用する含浸樹脂法に対して、本研究では、樹脂を合成する際に抽出試薬を担持させる手法を適用する。今年度は、モノマーを重合してポリマーを合成するかわりに、架橋していないポリメタクリル酸メチル(PMMA)を溶解し、再結晶化する際に抽出試薬を取り込むことによって吸着剤を調製した。PMMAはエタノール溶液中で40~60℃に加熱することによって溶解させた。この溶液を冷却すると、Pmmは再結晶化によって多孔質となる。この再結晶化の際に抽出試薬であるdi-(2-ethylhexyl)phosphoricacid(D2EHPA)を添加してPmmへの担持を試みた。D2EHPAを担持した再結晶化PMMAは、水中で収縮するため、表面積は非常に小さくなり、金属イオン吸着剤として適していないことが明らかとなった。 しかし、PmmとD2EHPAに加えて、鉄またはランタノイドの塩を溶解しておくと、D2EHPAと金属イオンが配位高分子を形成し、PMMAと安定な複合化凝集体を形成することを明らかにした。PMMAのかわりに、ポリアクリロニトリルを用いても同様に複合化凝集体を形成した。このようにポリマーを複合化したD2EHPA配位高分子が金属イオン吸着剤として利用可能であることを明らかにした。PMMA複合化D2EHPAの比表面積は7.4m^2・g-1であり、含浸樹脂の32.6m^2・g^<-1>と比較すると非常に小さい。しかし、飽和吸着量は含浸樹脂と比較して3倍程度大きいことがわかっている。表面積が小さいにも関わらず吸着能が高い原因については現在検討中である。
|