本研究は、仏像を納める器である厨子について、その意匠構成などを分析することにより、仏像を中心とする一空間が体現する意味や機能への理解に迫ろうとするものである。また、仏像それ自体も内部空間を有する容器であるとみなされるため、仏身と像内納入品との関わりについても視野に入れて、本年度の調査研究を進めた。 本年度の調査対象については、尊種を密教系弥勒像に絞って調査をおこなった前年度に引き続き、愛染明王像を中心とした密教系尊像のほか、阿弥陀如来像についても実見調査をおこなった。また、仏像の安置状況に関わる史料を博捜し、儀礼との関わりを考察した。調査内容と研究テーマは以下の通り。 (1)密教系尊像、とくに中世舎利信仰に関わる愛染明王像について 神奈川・称名寺厨子入り愛染明王像、個人像・愛染明王香合、摩尼宝珠曼茶羅絵厨子ほか (2)阿弥陀如来像における生身仏信仰と像内納入品 京都・蓮光寺阿弥陀如来像、静岡・新光明寺別院阿弥陀如来像、愛知・栄国寺如来半跡像ほか 83)その他の尊像および厨子・容器類 宮城・龍宝寺釈迦如来像(清涼寺式)、愛知・栄国寺釈迦如来像(清涼寺式) 春日信仰関係の絵画資料および舎利容器、古神宝類ほか (4)史料検討 古代・中世の儀礼と堂内荘厳について『山階流記』、『類聚世要抄』ほか 寺院縁起における仏像の聖性付与について蓮光寺『負別如来之縁起』、『誓願寺縁起』ほか.
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