研究概要 |
1.データベース構築の基礎となる文字コードを設定するため,Moller式の神官文字コードとHieroglyphica式の聖刻文字コードの対応表を作成した。また,Mollerのリストに掲載されているすべての字形を画像化する作業が終了した。 2.大英博物館に赴いて「BM 10060」と「BM 10682」の写真撮影を行うとともに,原資料を実見して種々の観察所見を得た。その結果,「BM 10060」は文字そのものが細かく表記が粗雑であるのに対して,「BM 10682」は文字が明瞭であり保存状態も比較的良好であることなどが判明した。このことから本年度は「BM 10682」の分析を行うこととした。 3.「BM 10682」の字形データベースを作成するため,テキストを講読するとともに,原資料の写真と釈文を対比させたデータベースを作成した。「BM 10682」に対する釈文には,Gardinerが1932年と1935年に作成した2種類のものがあるが,申請者による分析の結果,2種類の釈文には文字の判読という点から見て不十分な箇所が認められるため,新たな釈文の作成が求められることがわかった。2種類の釈文の精度を巡る分析結果の一部を,永井正勝「大英博物館所蔵の神官文字パピルス写本「BM 10682」に関する書誌学的及び文字素論的分析」『文藝言語研究 言語篇』59巻,2011, pp.107-125にまとめた。 4.「BM 10682」の1つ1つの文字の画像をデータベース化する作業に取り掛かっているが,これは当初の予定通り,2011年度に完成する。
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