本研究は、Fillmoreが提唱するフレーム意味論を理論的な足場とし、フレームの辞書であるFrameNet(http://framenet.icsi.berkeley.edu/)を、教育的見地から応用し、英語学習者の語彙習得を支援するシステムをオンラインで構築することを目的としている。本システムは言語理論を背景にした体系的な学習を提供できるという点で非常に有意義なものである。 本年度は、(1)システム構築のための理論的なバックグラウンドの確立、(2)システムに入力する英文データベースの構築、(3)学習語彙の選定という作業を、当初の計画に従って進めた。(1)に関して、関連書籍および関連論文を渉猟・研究し、フレーム意味論から見た語彙学習について考察を進めた。特に、フレーム喚起語が必須的に伴う要素(frame element)の実現形が、語彙学習の側面では重要であるということが明らかになった(例えば、動詞buyが喚起するCommerce_buyフレームについて、Meansのフレーム要素がbyの前置詞と伴って実現されることなど。この情報は学習者がbuyという動詞を使って発信する上で非常に重要である)。(2)に関して、British National Corpusなど既存のコーパスから、平易な用例を抜き出す作業や書籍のデータ化などを行った。これは次年度に計画しているアノテーションのベースとなるものである。(3)に関して、IACETの語彙リスト、ALC SVL、FrameNetのエントリーのデータをリスト化し、学習語彙の選定作業のベースとなるものを作成した。
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