研究概要 |
戦時・戦後の都市に生活する人々の文化活動の具体相とそこに表現される社会認識を実証的に解明することが本研究の目的である。その目的の達成のため、とくに戦前から戦後にかけて、建築作品の展覧会・講演会・小グループによる学習会などの文化活動を実践した建築技術者たちに関連する史資料に着目し、当該史資料の調査、収集、分析を行った。 平成23年度は、以下の研究活動を実施した。1,平成22年度から継続し、戦前期に、建築技術者グループである創宇社建築会に参加し、また戦時・戦後期に積極的に文化活動に参加し、多くの建築技術者と交流した竹村新太郎に関連する資料(以下竹村関係資料)に関し、3回のべ6日間の調査を実施し、年度末までに概要目録を作成した。これに関して、竹村関係資料を管理する竹村文庫関係者と資料に関するレクチャーを内容とする会合を定期的に開催した。2.平成22年度までに収集した、創宇社建築会参加者及び関係者に関する資料、聞き取り調査で得られた音声データの一部の整理と分析を行った。3.これまで知られていなかった創宇社建築会関係者の戦時期の動向に関して彼らが当該期に参加した建設工事現場等の現地調査を実施した。また、建築家西山夘三の資料を所蔵するNPO西山文庫にて、2回のべ5日間、戦後の建築技術者たちによる文化活動に関する資料の調査・収集を行った。これらの調査によって戦時・戦後の建築技術者たちの動向の解明を一層進めた。 以上の研究成果の一部は、上記1.2.に関し、1930年代の建築技術者の文化活動と労働文化の関係をテーマに『歴史評論』に論考として発表したほか、竹村関係資料概要目録等を冊子にまとめ、3.に関し、建築技術者の戦時・戦後の文化活動をテーマに、歴史学研究会近代史部会例会にて口頭で発表を行った。
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