本研究は、鎌倉幕府・江戸幕府という前後の武家政権にはみられない室町幕府の首班(室町殿)の「公家化」という現象に着目し、室町殿権力の特徴、中世後期における公家社会の存在意義や公武関係の特質の一端を探ろうとするものである。ここでは将軍の「公家化」が公家社会に及ぼす影響を解明することに主眼を置いて研究を進めた。具体的には、室町殿の源氏長者独占、名家と呼ばれる階層の公家の台頭という、室町期特有の現象とその背景を分析した。その結果、いずれの現象も義満の「公家化」のみにその原因を求めることはできず、南北朝内乱期に天皇への〈忠節〉を基準に幕府が公家を処遇するなかで形成された求心力構造に規定される部分も大きかった点が明らかとなった。
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