研究概要 |
論文「「ム」が上接する「モノソ(ゾ)」文について」(『日本語学最前線』、2010年5月)では、モノソ(ゾ)で終止する文と,モノナリで終止する文とを比較し、ムモノソ(ゾ)・ベキモノナリという形式は見られるが、ベキモノソ(ゾ)・ムモノナリという形式は上代では見られず、中古においても稀であることを示した。また、その原因を助詞ソ(ゾ)と助辞ナリとの機能面での差異から説明した。口頭発表「上代における助辞「ム」の機能と連体形述語文との関わりについて」(第232回筑紫日本語研究会、2010年8月)では、連体形述語文における助辞ムの現れ方を整理し、疑問表現における「問い」と「疑い」の差異から考察する必要性を主張した。論文「上代における終助詞「ガネ」の機能と「連体形+ソ」文」(『福岡教育大学国語科研究論集』52、2011年2月)では、上代語の助詞ガネ(連体形接続)に注目し、ガネ文が「未実現事態に関して、前件と後件が因果関係で結ばれていることを明示する」という機能を持つことを示した。 また、上代の「連体形+ソ」文で助辞ムにソが下接する際にはガネ文と同様の機能を持つことを示し、ガネ文衰退の一因と位置づけた。口頭発表「連接関係から見た古代日本語の連体形述語文について-"確言系"の構文を中心に-」(名古屋言語研究会例会(第85回)、2010年12月)では、中古のゾによる係り結び構文で結びが助辞ムの場合や「ムモノソ(ゾ)」文も、ガネ文と同様の機能を持つことを示し、中古から中世にかけて疑問詞疑問文の中心が終助詞ゾ文であることも踏まえた上で、連体形述語文の体系的変化は、"確言系"と"疑問系"の区別を発展的に取り払い、両者の史的連続性を体系的に記述すべきであることを主張した。
|