研究課題
近年、図形やグラフなどさまざまな非言語的表現に基づく推論の重要性が注目され研究が行われている。このような推論研究においては、伝統的な論理学的分析とともに、非言語的な表現の持つ認知的な性質の分析が不可欠となる。しかしこれまでの論理学的研究では意味論的研究が中心で、証明論的研究は行われていない。また認知科学的研究では諸概念の形式化が不充分なまま様々な概念が乱立している。本研究では、図形推論の分析のための証明論的な枠組みを導入する。またこれまでの認知科学的な諸概念を整理し、本研究の証明論の枠組みの中で形式化する。これらを数学的構造として抽象化し、図形推論を分析するための統合的推論研究の枠組みを確立することを目指す。1.論理学証明論のもっとも基本的な分析手法の一つである論理体系間の翻訳手法を応用し、これまでに[Mineshima-Okada-Takemura 2011]で導入してきたオイラー図推論体系から自然演繹体系への翻訳を与えた。その翻訳の帰結について、free ride(自動表現;[Shimojima 1996])の概念に基づいて考察した。Free rideは図形表現の持つもっとも基本的な認知的性質の一つであり、Shimojima-Barwiseはチャンネル理論に基づく意味論的な形式化を行っている。本研究では、上記翻訳の健全性によって、free rideが発生する意味論的条件が満たされることを示し、翻訳の概念を用いてfree rideが証明論的に特徴づけられることを示した。2.また自然演繹における正規形証明の概念を基に、オイラー図推論体系における正規形図形的証明の概念を導入し、正規化定理を証明した。その帰結として(1)正規形オイラー図証明の構造分析(2)オイラー図推論体系における部分論理式性(3)オイラー図証明構造と自然演繹証明構造の比較を行った。
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Journal of Logic, Language and Information
巻: (近刊)
Diagrammatic Representation and Inference : 6th International Conference, Diagrams 2010
巻: 6170 ページ: 99-114
巻: 6170 ページ: 6-22
The annual meeting of the Cognitive Science Society (CogSci 2010)
ページ: 2668-2673
http://abelard.flet.keio.ac.jp/person/takemura/index.html