本研究は、9~14世紀の東南アジア大陸部に栄えたアンコール王朝の交易ネットワークのあり方を、思想的・制度的背景も含めて検討することで、アンコールの交易が当時の統治システムの中で果たした機能と役割を明らかにすることを目的とする。 本年度の研究内容として、史資料の収集と整理作業の継続および先行研究の整理と概括を行い、その成果を適宜発表した。 また、海外調査として、カンボジアの保存事務所等に保存されている碑文を調査し、データを収集した。特に、彫りが浅くこれまで判読できなかった碑文について、三次元デジタイザー(VIVID910)を用いてデータをとるための体制作りを行なった。具体的には、在シアムレアプのアンコール保存事務所に今後の調査許可をとり、現地スタッフとの協力関係を築くことに成功した。翌年度以降、本格的に三次元碑文データベースの構築作業を進める。さらに、収集した碑文史料をアルバイトを雇ってデータベース化した。 これらの作業は、アンコール史研究の基礎となる碑文史料を整理し、これまで判読できなかった箇所の復元という意味で新史料の発掘という側面ももつ、当該研究にとって基幹となる重要な作業である。
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