研究課題
研究期間1年目には、日本人英語学習者の第一言語(日本語)と第二言語(英語)の処理や情報保持の差異について、第一言語と第二言語における単語の具象性の関係の調査、改訂階層モデル検証(翻訳課題)における第一言語と第二言語の頻度の影響の調査を行った。その結果をもとに、研究期間2年目となる平成23年度には、文脈内に含まれる単語の処理や理解と、その後の記憶がどのように変化するかに注目し、第一言語(日本語)における単文内に含まれる語彙記憶の収束に関する調査を実施した。特に、【1】文脈から構築される心的表象は、文脈内に含まれる語彙記憶に対し、どのような影響を与えるか、【2】上記1への回答は、言語(英語、日本語)によって異なるかの2点に注目し、分析したところ、以下のような結果が得られた。(1)抽象度の高い上位語が文脈内で提示された場合、一文全体で表わされている意味に合う情報がインプット時に活性化されるため、読み手は活性化された具体的な情報を誤って「あった」と再認してしまう。その傾向は、第一言語(日本語)によるインプット条件で強くみられる。(2)第二言語(英語)の場合には第一言語ほど強く文脈の影響を受けず、目標語の頻度など、文脈に含まれる個々の単語の影響を受ける。しかし、上位語の場合には、より具体的な情報を持つ基本語や下位語に比べ、インプット段階で構築された表象が、保持される情報に影響を及ぼす可能性が示された。本研究は、第一言語と第二言語における読解過程において、文内に含まれる語彙記憶がどのように変化するかを検証したものであり、文脈情報が語彙保持に対して持つ影響が言語間によって異なることを示している。
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東京経済大学人文自然科学論集
巻: 132号 ページ: 81-90
Applied Linguistics, Global and Local (Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the British Association for Applied Linguistics)
ページ: 271-282