日本帝国において資本主義的システムが形成されつつあった1920年代~1930年代に焦点を当て、改造社・中央公論社・戦旗社などから出された、「社会主義」をめぐる合法・非合法的商品が、植民地での市場拡大を試みながら競争していたことに注目した。書物の複雑な移動と交錯に注目し、日本語書物の生産・移動・消費にかかわっていた地域の研究者との連携も図ることによって、「日本近代文学」というナショナルな領土性を担保に内向きの発言で充填されていた、帝国日本の出版システムや文化商品としての「文学」の枠組みを捉えなおすことが出来た。
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