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2010 年度 実績報告書

古代日本文学における「交易」の研究-日本海地域を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 22820063
研究機関明治大学

研究代表者

堂野前 彰子  明治大学, 文学部, 兼任講師 (50588770)

キーワード交易 / 日本海 / 河川交易ルート / 秦氏 / 神事 / 稲の伝播 / 移住
研究概要

平成22年度は稲の祭祀と王権神話を中心テーマにすえて、(1)文献研究と(2)フィールド調査から「交易」の様相を明らかにすることを目標に研究を行った。フィールド調査を予定していた幾つかの神事が非公開であったため、実際に調査できたのは出雲美保神社の諸田船神事と小浜神宮寺のお水送り神事であった。一見豊漁祈願のように思える美保神社の神事は、本来稲を招き寄せる神事であったと考えられており、そのような海上から寄りくる稲を招きよせる神事が南島(奄美・沖縄)にも多く見られることを考えあわせると、黒潮に乗って九州を北上し対馬を経て出雲に至る稲の伝播ルートがこの神事の背後にあることが明らかとなり、そのような稲のイメージが『古事記』のスクナヒコナに投影されていることがわかった。後者神宮寺のお水送りの調査からは、小浜から奈良東大寺まで実際に水がたどり得る道程、すなわち琵琶湖から宇治川・木津川を経て奈良へと通じる河川ルートが浮かび上がり、清めの水を送るという宗教儀式が交易ルートに重ねられていることがわかった。その河川ルートが記紀の磐姫皇后の歌やホムダワケ禊のくだりにも読み取れ、さらに『山代国風土記』逸文の賀茂伝承の新しい解釈に考え至った。その河川交易ルートの背後に仏教伝播に一役買った秦氏がいることは明らかで、交易の担い手として秦氏を想定することができた。また『風土記』の文献研究からは、今までは豪族の没落伝承としてのみ解釈されてこなかった「餅の的伝承」(『豊後国風土記』『山城国風土記』逸文)を、秦氏が稲を各地に伝えながら移住していった物語として解釈することができるという結論を得た。交易を考える上で移住の問題を取り上げることが有効であることは、複眼的に行ってきた琉球説話集『遺老説伝』の研究からもわかり、国際学会での発表という国際交流にも繋がった。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2011 2010

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 境界を越えていく女-『万葉集』を中心に-2011

    • 著者名/発表者名
      堂野前彰子
    • 雑誌名

      日本古代学

      巻: 3

  • [雑誌論文] 古代日本文学における「墓」-その形見としての機能-2010

    • 著者名/発表者名
      堂野前彰子
    • 雑誌名

      文芸研究

      巻: 112 ページ: 81-92

    • 査読あり
  • [学会発表] 琉球説話集『遺老説伝』の世界-「移住」と「往来」-2011

    • 著者名/発表者名
      堂野前彰子
    • 学会等名
      東亜文化交流国際学術会議(共同主催:中国南通大学、韓国延世大学、日本明治大学)
    • 発表場所
      中国南通大学
    • 年月日
      2011-02-17
  • [学会発表] 移動する神と人-風土記を中心に-2010

    • 著者名/発表者名
      堂野前彰子
    • 学会等名
      日本古代学教育・研究センター主宰国際学術会議「交響する古代」
    • 発表場所
      明治大学駿河台キャンパス
    • 年月日
      2010-11-04
  • [学会発表] 『遺老説伝』に描かれた「嶽」-その発生から擬能を考える-2010

    • 著者名/発表者名
      堂野前彰子
    • 学会等名
      奄美沖縄民間文芸学会大会
    • 発表場所
      沖縄国際大学
    • 年月日
      2010-09-23
  • [図書] 交響する古代-東アジアの中の日本-(「移動する神と人-風土記を中心に-」)2011

    • 著者名/発表者名
      吉村武彦・日向一雅・石川日出志編
    • 総ページ数
      196-213
    • 出版者
      東京堂出版

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公開日: 2012-07-19  

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