本研究は、近代中国における小品文の発展の経緯について、その創始者とされる周作人の文芸思想を軸に、1920年代の文芸雑誌で掲載された小品文に関する評論およびコラムにみる文学ジャンル観を分析視点として取り入れることにより、中国における近代化の波が小品文の文学的概念の形成に与えた影響を明らかにすることを目的とする。 平成22年度は主に次の研究を実施した。1.これまで蒐集した小品文関連の資料、論考の問題整理を行った、2.1.の作業と並行して周作人の文芸評論の分析の実施と文芸雑誌の小品文評論および小品文欄の蒐集作業を行った、3.蒐集した資料の分析を行った、4.平成22年度後半以降に、研究成果について学会報告を行った。 上記四点の実施に伴い、次のような研究の成果があった。1.1925年頃の周作人小品文の変化を指摘するに至った、2.今回新たに蒐集した小品文関連の資料から、1920年代初頭における小品文の言及を南方のとある文芸集団が活発に行っていることが判明した(この分析については次年度の課題としたい)、3.シンポジウムと研究会で口頭報告を実施し広く意見を頂戴し、その内容を纏め発表した。(鳥谷まゆみ「一九二〇年代中国「小品文」に関する一考察-周作人『雨天的書』序文を中心に-」(『言語文化研究』第22巻3号、2011年1月、169-184頁))。 平成23年度も継続して小品文関連資料の蒐集を行う。特に1920年代初頭と後半の評論と作品を中心に蒐集し、分析を実施する予定である。
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