本研究は、近代以降の小地域単位の人口統計資料を用いて、日本の大都市における居住地帯分化の変遷に対する、第2次世界大戦時の戦災や大規模災害による影響を解明することを目的としている。既往研究の多くは、個々の時点における居住地帯分化の解析に重点を置いており、小地域単位の人口統計の資料的な制約や利用の困難さから、長期的な観点からの分析は行なわれてこなかった。本研究は、小地域単位の人口統計資料のデジタルデータ化と対応する地図データの作成によって、地理情報システム(GIS)を利用した大規模な時空間データの分析を可能とするものである。本研究によって、日本の大都市における居住地帯分化の連続的な変遷の地図化が初めてなされるとともに、研究の過程で作成される小地域単位の人口統計資料に関するデータベースの公開によって、他の研究への波及効果も期待できる。 平成22年度は、分析の対象とする6都市(東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)に関する、近代以降の小地域単位の人口統計資料の収集・デジタル化と、関連する地図資料の収集・デジタル化を行ない、資料の特徴などに関する基礎的な分析を行なう計画であった。人口統計資料および地図資料の収集は、平成22年度中に完了し、デジタル化についても大半の資料について完了させた。また、地理情報システム学会および人文地理学会においては、収集した資料の特徴やそのデジタル化作業の詳細について発表し、デジタル化した小地域単位の人口統計データは、2011年3月に刊行された『京都の歴史GIS』や立命館地理学に掲載された論文において利用した。現在のところ、当初の研究実施計画は順調に達成されている。
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