本研究は、近代以降の小地域単位の人口統計資料を用いて、日本の大都市における居住地帯分化の変遷に対する第2次世界大戦時の戦災や大規模災害による影響を解明することを目的としている。既往研究の多くは、個々の時点における居住地帯分化の解析に重点を置いており、小地域単位の人口統計の資料的な制約や利用の困難さから、長期的な観点からの分析は行なわれてこなかった。本研究は、小地域単位の人口統計資料のデジタルデータ化と対応する地図データの作成によって、地理情報システム(GIS)を利用した大規模な時空間データの分析を可能とするものである。本研究によって、日本の大都市における居住地帯分化の連続的な変遷の地図化が初めてなされるとともに、研究の過程で作成される小地域単位の人口統計資料に関するデータベースの公開によって、他の研究への波及効果も期待できる。 平成23年度は、これまでに作成してきた6都市(東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)に関する近代以降の小地域単位の人口統計データベースのうち、東京および京都に関するデータを利用して、長期的な居住地帯分化に関する時空間分析を実施し、居住地帯分化の変遷に対する戦災および大規模災害の影響に関する研究を進めた。このうち、関東大震災および東京大空襲による被害を受けた東京に関して特に詳細に検討し、国内学会に加え米国ニューヨークで開かれた国際学会などで成果を発表した。加えて、震災および戦災を経験した東京と、同時代におけるそれらの被害が比較的軽微な京都との比較分析も行ない、戦災や大規模災害による居住地帯分化の長期的な変遷に対する影響の一端を明らかにし、国内学会で発表するとともに関連する論文を執筆、公表した。また、作成したデータベースの利用可能性についても検討を進め、学会での口頭発表や論文としての発表を行なった。
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