20世紀初頭の欧米における芸術の転換期において、日本の芸術芸能はいかに発信され、いかに受容されたのか。本研究の目的は、野口米次郎とその周辺の文化ネットワークの実証的な検証を通して、その一端を明らかにすることであった。日本の芸術芸能への関心は、20世紀転換期の「象徴主義」「神秘思想」「東洋」といった欧米知識人たちの関心空間の中にまさに胚胎し、ギリシアや古典、伝統回帰と表裏一体で形成されていくモダニズム芸術運動と連動した。本研究では、野口を軸に、ここに介在した日本文化人と英語圏文学者との間の交流、その結果生まれた芸術芸能の相互作用の実態と内実を解明し、この時期における日本と海外の芸術交流史に新たな視点を切り開いた。
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