本研究は、多様なカップル形態が存在する現代の日本において、(婚姻夫婦を含む)各カップルが自律的に自分たちの関係を形成する法律上の可能性を模索するにあたり、その法的限界となるものの理論的根拠を提示することを目的とするものである。 平成22年度は、主として、(1)夫婦財産制に関するフランスの裁判例および学説上の議論を参照・分析する作業、(2)契約法〔主に契約関係や契約交渉破棄の場面〕に関する日本の裁判例および学説上の議論を参照・分析する作業を行った。 (1)により、夫婦による自由な財産的規律を制約する原理として、フランスでは、「家族の利益」(=推定相続人たる子の利益)と「債権者の保護」が挙げられていることが明らかになった。仏民法は、一定の要件を充たせば夫婦財産制の変更が可能であると規定するなど、夫婦の自由との利害調整を行っている。これらの成果については、「夫婦財産制の変更-「家族の利益」の意義」と題した拙稿によって平成23年度中に公表予定である。また、(2)により、日本では、ビジネス上の関係においても、相手の誤信を惹起させるような行為を積極的に行った者に損害賠償責任が肯定されるなど、関係破棄・関係解消には一定の責任が伴いうることが明らかになった(後記〔雑誌論文〕欄参照)。いずれについても、分析は部分的なものに止まっているため、平成23年度にさらに研究を進める予定である。
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