研究概要 |
本研究では、子どもの科学概念の構築過程を表象の観点から考察することを通じて、今後の理科教育において強力に要請される「自己調整学習の成立」に向けた機能的な教授論的視点を導出することを主な目的とした。平成23年度では、Nelson,T.O.らのメタ認知理論およびWinn6,P.H,の提起する自己調整学習モデルを基調として協同学習を加味した教授論的視点を構想した。その上で、中学校理科の植物のからだのつくりと働きの単元を事例に自己調整学習の成立過程を分析し、かつ教授論的視点の有用性を検証した。この際、自己調整学習の成立と連動して達成される科学概念形成の内実について表象機能の側面から分析することで、理科教育における自己調整学習の成立過程の認知的側面からの精査を志向した。 結果として、自己調整学習は課題の明確化、学習目標の設定、方策および方略の設定といった過程をメタ認知的モニタリングとコントロールをハブ機能として成立していることが明らかとなった。その際、自己調整学習は、対話を基調とした協同学習を通じて、メタ認知的機能を活性化させるための足場づくりの提供によって一層促進されることが明らかとなった。また、協同的な学習過程を通じ、子どもが自らの認知過程を相対化するというメタ認知的機能を高めることによって、科学概念構築を具現化することが表象ネットワークの精緻化から明らかとなった。この際、教授過程において、子ども自身に学習全体を振り返えらせ、知識の精緻化を実感させる場面では、電子黒板の利用は有効であった。
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