研究概要 |
1 立地問題における動学的安定性 立地問題モデルは、Hotelling(1929)によりモデル化され、ある直線の上で、企業が立地場所を決め競争をするモデルである。この立地問題の多くの研究では、Hotelling(1929)により提唱されたprinciple of minimum differentiation(MD現象)と呼ばれる、企業がある地点において集中的に立地する現象を、均衡概念により導くことが可能かどうかを分析した。しかし、結果は、プレーヤーの人数に依存した形になり、一概に均衡による結果かどうかを示す結果は得られていない。本研究では、研究の目的も挙げた手法を使い、動学的に安定な立地を求め、プレーヤーの人数に関わらず、MD現象が安定な結果としてあり得ることを示した。この問題は、人数が多い非分割財配分問題の一例と見なすこともでき、今後非分割財市場の分析にも応用できると考えている。 上記の結果を論文に纏め、論文誌に投稿し、現在revise中である。 2 Roth and Postlewaite安定性について(RP) 非分割財におけるRoth and Postlewaite(1977)が提唱した安定性概念を再考察。ここでは、そのような配分をRP安定と呼ぶ。RP安定な配分全体がゲーム理論の設立者のvon NeumannとMorgenstemにより定義された安定集合の一種である事が判明した。この事実により、RP安定な配分も非分割財市場モデルの解概念として十分に考察する意味があることを示した。またShapley and Scarf(1974)をMoulin(1995)やKonishi,Quint,Wako(2001)のように財の種類を増やしたモデルを考察した場合でも、RP安定な配分の存在が保証され、従来の研究で適用されているコアや競争均衡よりは存在性の観点から優れていることも示した。
|