研究概要 |
(1)投票モデルにおける平均ルールの動学的安定性について 今まで,直感的にはわかりやすい平均ルールと呼ばれる政策の決め方については,あまり理論的な考察が行われなかった.なぜなら,Moulin(1980,Public Choice)やChing (1994, Social Choice and Welfare)らにより中間値を与えるルール(median rule)がstrategy-proof(人々が真の選好を表明することが必ず最適であるという性質)かつパレート効率的であることが知られているが,パレート非効率的な均衡も存在していることも知られている.本研究では,median ruleよりルールが直感的average ruleに対する理論的に考察を行った.その結果,averageruleを用いるゲームの均衡が動学的安定であることを示した.このモデルは,政策といった非分割財(公共財)を配分するモデルとして見ることも可能であり,今後研究課題に関連するモデルの分析への第一歩とも見なすことも可能である. (2)Shapley-Scarf市場における遠視眼的安定な配分の集合 Kawasaki (2010, Mathematical Social Sciences)やKlaus et al. (2010, Journal of Mathematical Economics)では,意思決定者がある程度の先見性を持ったとき,競争均衡配分が実現されることを示し,競争均衡に対するゲーム理論的解釈を与えることができた.しかし,不可分財が存在する経済において競争均衡配分が必ずしもパレート最適とは限らないため,本研究ではパレート最適かつ個人合理性をみたす配分に対しても同様なゲーム理論的な説明を与えることを試みた. 本研究ではweak dominationを基に定義した遠視眼的安定集合を適用した.上記の先行研究では主にstrong dominationを基に定義しているが,安定集合を考える際,基となっている支配関係により結果が大きく変わることはよく知られている(Greenberg (1993, International Journal of Game Theory)など)パレートかつ個人合理的な配分は遠視眼的安定集合となることを示したが,唯一性は課顯として残る.
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