平成22年度に、本研究は先行研究のサーベイを行い、基礎理論を習得しながら、ベトナムにおける貧困者のアプローチの事例と、貧困削減に関しては貧困者の連携先と考えられる国際協力組織や多国籍企業の経営学的な取り組みを調査した。具体的に、これまでに調査・分析したベトナムBinh Dinh省とDong Nai省の障害者をより深く掘り下げるとともに、他の地域の障害者と他のセグメント(孤児、女性等)の貧困者の事例を調査した。貧困者の自立活動やイノベーションによる自らの課題解決の事例分析を通じて、貧困者を単に貧困削減の受動的な受益者とみるのではなく、主体的なプレーヤーと位置づけることの意義を改めて強調した。また、貧困者の活動が、急激な経済成長の中で取り残されていく地域、農村部で小規模で始められるのがほとんどであり、より効果的に貧困問題を解決するとともに、より多くの貧困者のために活動を拡大させることができるのかという質量両面のスケーリングが大変重要な課題として改めて認識された。個々の貧困者の自立組織は単独的に活動していくよりも、むしろ戦略的に他の自立組織との連携を進め、共通の課題の解決に取り組んでいくことがその解決方法の一つである。貧困者の自立組織の協会、共通の商品の販売経路の構築や貧困者の自立活動に関する共通の情報発信などがその具体的な取り組みである。また、貧困者自身の取り組みも限界があるため、企業や非営利組織と連携していく必要性を指摘した。
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