貧困者が認識・対話・土着化したイノベーションによる創造的な解決策の策定・貧困削減に向けたソリューションの活用という一連の行動・行為を通して貧困問題を解決していくプロセスが重要な貧困削減の枠組みのひとつである。貧困者の自立活動は小規模で行われているのがほとんどであるため、その活動を継続・拡大させていくには、貧困者自身だけでは限界がある。だから、本研究は政府、多国籍企業や非営利組織が、単に貧困者に雇用機会を与えたり、商品やサービスを提供したりするというやり方よりも、むしろ、貧困者の主体的行動・行為を重視しながら、個々の貧困対象者が貧困課題を解決していくプロセスおよびプロセスの各段階における課題を配慮し、自らの資源・強みを発揮した対応・支援を検討するべきことを指摘した。 開発のための経営学研究は既存の経営学の理論基盤から切り離された分野ではなく、既存の経営学理論を単に応用する領域でもない。むしろ開発という視点でいかに貧困削減の撲滅や開発の課題という視点を達成することができるのかを追求することにより、経営学が更に発展し、経営学研究の新しいフロンティアの1つともいえる開発のための経営学研究が台頭している。貧困削減に関する経営学研究、特に本研究が注目する貧困者や社会問題の当事者の主体的行動を起点とする経営学的アプローチは研究の初期段階にあり、残された課題は山積みされているが、より効果的な貧困削減の取り組みを道づけることで、貧困削減に対して重要な貢献となることが期待される。
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