本研究の目的は、日本と欧州それぞれの企業におけるデザイン・マネジメントに関する国際比較分析を通じて、以下の2点を明らかにすることである。第一に、デザインを創出する組織的仕組みおよび開発プロセスにおける重要要件を特定し、デザイン・マネジメントの本質を明らかにする。第二に、理論的枠組みを構築するとともにその実証を行い、デザイン・マネジメントにおける新たな研究課題を見出す。本年度は、まず、既存研究成果の検討を通じて、より先進性や革新性の高いデザインの創出を促すためのマネジメントを分析するうえで、デザインに関わる組織的仕組みや開発プロセスにおいてどのような側面を重視すればよいかを抽出した。具体的には、組織的仕組みについては、社内におけるデザイン部門の位置づけやデザイン部門内の体制に着目し、開発プロセスについては、製品開発活動におけるデザイン部門の役割、関与の仕方、デザイン部門内の分業の仕方に着目することとした。次に、これらの分析視点にもとづきながら、家電メーカーと自動車メーカーを中心に事例調査を行った。事例調査を通じて、デザインに関わる組織的仕組みや開発プロセスのあり方に関して、日本と欧州間および日本企業間でいかなる相違があるのかを把握するとともに、それらの相違がデザイン・マネジメントのあり方や製品デザインのアウトプットにいかなる影響を及ぼしているのかを把握することができた。またその中で、製品デザインに関わる「戦略-組織的仕組み-開発プロセス」の相互関係の適合性についても分析を行い、これらの成果をもとに理論的枠組みを構築するための基盤を築くことができた。
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