研究概要 |
自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder;以下ASD)者に対して自己の形成を支援するという立場から,以下のような視点での研究および支援を行った。 まず,心理臨床的支援に関して,思春期・青年期のASD者を対象とした集団療法について,先行研究を整理し近年の動向と課題を明確にした(学術論文・査読無し)。集団療法の中でも,特に児童期・思春期のASD者の自己の形成をねらいとしたグループワークの実施について啓発冊子を作成し,学会や講演会などで無料の配布を行った。 さらに,ASD者の自己形成のための有効な支援方法として,心理劇的ロールプレイングに着目し,実際の実践を通して,対象者の自発性の変容からみた自己理解の変化について検討した(学会発表)。また,心理劇的ロールプレイングにおけるスタッフの反応様式が対象者であるASD者の自己理解にどのような影響を及ぼすのかについての検討も行った(学会発表)。 日常や学校現場においては,ASD児・者とともに日常の多くの時間を過ごすであろうと考えられる定型発達児・者の重要性に着目した調査研究を行った。ASD者が参加する集団療法の場に定型発達者を加え,定型発達者がASD者に対してどのように理解を深めていくのか,またそれにともないどのように定型発達者自身が自己理解を変容させていくのかについて,検討を行い,得られた知見については,学会シンポジウムでの話題提供や学術論文(査読無)での発表を行った。 その他,日本心理臨床学会や日本特殊教育学会への参加をとおして,該当分野での最新研究知見の収集や研究者の間での情報交換などを行った。日本発達心理学会に関しては,震災のため参加が困難となった。また,学齢期の被験児・者が春休みの期間にあわせて自己理解に関するデータ収集を行う予定であったが,震災による物品流通の断絶や研究協力者の心身的負担の高さにより不可能となった。
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