研究概要 |
自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder; 以下ASD)者に対して,自己の形成を支援するという立場から,以下のような視点での研究および支援を行った。 まず,思春期から青年期にかけてのASD者および定型発達者を対象に,自己についての理解を問う一連の質問を実施し,その回答を独自の手法にて分類し比較検討する中で,ASD者の自己理解の特徴について明らかにした(学術雑誌・査読あり)。一方で,レビュー論文として,ASD者の自己に関する先行研究を概観し,その研究動向と課題について検討を行った(学術雑誌・査読無し)。 また,ASD者の自己をとりまく周囲の環境について,学校教育場面に着目し,校内や校外の支援者をつなぐ役割を担う特別支援教育コーディネーターが,どのように連携を調整する行動をとっているのかについて,グラウンデッドセオリーを用いた検討を行うことで明らかにした(学術論文・査読有)。 さらに,ASD者がいかに他者との関係性の中で自己に対する理解を深めるのかという視点から,他者との間の微妙な空気や雰囲気を読む能力としての「気まずさ」の認識に着目した研究を行った。はじめに,小学生から成人までの数百名の定型発達者を対象に「気まずさ」についての自由回答を求め,結果をカテゴライズした。その後,ASD者を対象に同様の調査を行い,得られた回答を定型発達者の結果と比較することによって,ASD者ならではの,感じにくいあるいは感じやすい「気まずさ」の特徴を見出した。これらの研究結果については,学会大会にて発表を行った。
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