平成22年度は計画通り、以下の二つのプロジェクトを進めた。第一のプロジェクトは、家計の借入制約に加えて、耐久財の二次取引の困難さを考慮することが、米国のConsumer Expenditure Surveyデータにおいて観察される耐久財と非耐久財の消費支出パターンを説明するために重要であるか検証するものである。本研究では、標準的な不完備市場のモデルを耐久、非耐久財を明示的に区別するように拡張し、耐久財市場の摩擦の影響を調べる。分析において、重要な点の一つは、四半期ごとに行われるサーベイの構造をモデルのシミュレーションで再現し、より多くのデータのモーメントを利用するために、モデルを四半期周期でカリブレートすることである。四半期周期ではモデルの定常状態への収束に時間がかかり、計算がより困難になるが、当期はこの点に集中的に取り組み、データの重要なモーメントを、大部分説明できるモデルを構築した。得られた結果の頑健性とカリブレートしたモデルを用いての、耐久財市場の摩擦についてのさらなる分析は平成23年度への課題として残った。 第二のプロジェクトは、日本の家計レベルの個票データを用いて、日本における家計の所得リスクとリスクシェアリングの程度を分析する研究である。本研究の目的の一つは、日本の所得と消費の記述統計を、Review of Economic Dynamics誌が2010年の特集号で発表した米国や英国などのデータと比較することである。平成22年度は、家計調査のデータの整備を行い、税引き前、税引き後所得、消費について平均や分散、Gini係数など主な記述統計の計算を行った。
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