本研究は、(1)文献研究、(2)インタビュー調査、(3)中学・高校生アンケート、(4)卒業生アンケートにわかれる。(1)文献研究については、最新の文献をレビューするとともに、2011年に刊行された拙著(当時の調査のアンケートを資料として含む)を調査でお世話になった先生方に資料を提供しコメントをいただくことでアンケートに修正を加える材料とした。(2)インタビュー調査については、昨年度までのデータの分析を深め、アメリカ比較教育学会にて研究発表を行った。(3)中学・高校生アンケートについては、昨年度までのデータのクリーニング作業を進め、分析を行った。(4)卒業生アンケートについては、(1)(2)の文献研究、インタビュー調査をふまえたうえでアンケートの分析を進めた。 以上から明らかになったのは、学力の形成・発揮について、教員の指導観が大きな影響を与えていることである。教員の指導観を「形式-内容」「裁量大-裁量小」の二軸で分析すると、「形式裁量大・内容裁量大」「形式裁量小・内容裁量小」「形式裁量大・内容裁量小」の3タイプが存在するのに対して、「形式裁量小・内容裁量大」というタイプが存在しないことが明らかになった。新しい学習指導要領では、実はこの「形式裁量小・内容裁量大」の指導観が理念として重視されているにもかかわらず、実際の教員にはその理念が伝わっていないことが生徒の学力形成・発揮の阻害要因となっていたということである。このことは、今後の高大連携などを考えるうえで、重要な示唆を持っていると考えられる。
|