研究課題
本研究課題の目的は、「利子率操作型の金融政策ルール(テイラー・ルール)と均衡経路の一意決定性(マクロ経済の動学安定性)の関係についての理論分析」において、従来は重視されていなかったが本来経済に内在する主体の異質性を導入し、政策提言を充実させることである。2010年度は、前年度後半から進めていた、2国間の異質性がある国際経済モデルの分析の深化を主要な目標として研究を行なった。その為に、2種類の貿易財を仮定するモデルと、貿易財と非貿易財が混合し得るモデルを検討した。インフレ率のみに反応する金融政策の下では、「2種類の貿易財を考慮すること」と「非貿易財が存在せず事実上1種の貿易財を仮定すること」の間に帰結の大差はなかった。一物一価が成り立たない非貿易財の存在は、安定化において重要な意味を持つのである。非貿易財の仮定は、経済の開放化と安定性との関連を考察する上でも有用だが、「不完全開放下において必ず不安定になる条件を満たす経済」を完全開放しても安定化には資さないことが示された。また、2種類貿易財の場合には、生産にも反応する利子率ルールを2財の異質性を生かす形に工夫して経済安定化を図る手法もあることが確認された。いずれのモデル分析にも共通する経済安定化の為の教訓は、「経済変数に対して強く利子率を反応させれば安定化する」というテイラー原理に縛られない、「一方の国は強く、他方は弱く反応」といったように各国経済の異質性を考慮して政策運営を行なうことである。このように、解析的な結果自体は概ねまとまったので、2011年度は学会報告等を通じて(既に1回予定あり)、論文内容の充実を図り完成及び査読誌への投稿を目指す。それと共に課題に関連する新規の分析も進行させる。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Economics Bulletin
巻: Vol.30, No.4 ページ: 3055-3065
http://www.accessecon.com/includes/CountdownloadPDF.aspx?PaperID=EB-10-00193