研究概要 |
本年度は,(1)既有データを教材開発の観点から再分析すること,(2)教材開発の指針を導出すること,以上の二点に取り組んだ。 (1)に関して,本研究では,数学的探究における操作的証明活動を促進する方法を明らかにするために,小学五年生のペア,及び中学三年生のペアを対象として教授実験を複数回行ってきた。それらの教授実験で準備した課題や具体物それ自体もまた,数学的探究における操作的証明活動を促す教材を考察するための指針になると思われた。そのため,教材開発の観点からそれらの教授実験の再分析を行った。 (2)に関して,上述の再分析の結果から,以下の三点を明らかにした。第一は,反例や論駁の提起を可能にする課題を設定することにより,事柄や証明を能動的に洗練しようとする動機が生まれるとともに,ラカトシュの可謬主義を反映した学習を実現できるようになると期待されることである。第二は,その際に具体物と他の表現様式との間で対立する結果が生まれる課題を設定することが効果的であることである。第三は,具体物に関して,教師が子どもの活動を予想したり子どもの実態を考慮したりした上で,構造の異なる複数の具体物や,新たな事柄の生成を実現するための具体物を適切に準備することが重要になることである。 また,第35回国際数学教育心理学会年会(平成23年7月,トルコ・アンカラのMiddle East Technical University)にて研究発表を行い,第35回日本科学教育学会年会(平成23年8月,東京工業大学),及び第44回日本数学教育学会数学教育論文発表会(平成23年11月,上越教育大学)に参加することで,研究情報を収集するとともに,他の証明研究者と研究討議を行った。
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