中国やインドなど、急速な経済成長を遂げている途上国からの二酸化炭素排出量は増加の傾向にある。2008年から2012年にかけての二酸化炭素排出量の削減を取り決めた京都議定書ではこれらの途上国は削減義務を負わないが、2013年以降の二酸化炭素排出量削減の枠組みでは削減義務を負うことが望ましい。現在、2013年以降の枠組みにおいて、どのように二酸化炭素排出枠を国間で配分すれば衡平であるのかについて議論されている。そこで、2005年を基準年とする多地域多部門の動学的応用一般均衡モデルを構築し、2013年以降の二酸化炭素排出枠の配分について、(1)2050年時点のひとりあたり排出枠を国間で等しくする配分方法("Contraction and Convergence")と(2)1950年から2050年までのひとりあたり累積排出量を等しくする配分方法("Historical Responsibility")の2つを考慮し、シミュレーションを行った。2013年から2050年の世界全体の総排出量の目標値であるが、550ppmCo2eq安定化シナリオを採用し、Meinshausen et al.(2009)の値に従っている。分析の結果、排出権取引を行うと、Contraction and ConvergenceシナリオとHistorical Responsibilityシナリオの限界削減費用は同程度である。そして、中国などの途上国にとっては、Historical responsibilityシナリオにおいてより多くの排出枠を配分されるが、Historical Responsibilityの配分方法においても、中国は長期的には排出権購入国になることが示された。
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