| 研究概要 |
平成22年度の研究活動は,研究資料の収集・整理・分析をとおして,数学教育における概念変容研究の理論的基盤を明確にし,その視座から学校数学のカリキュラム構成を分析することで,具体的な内容領域における概念変容場面を同定することを計画した。
上記の計画に基づき,学校数学カリキュラムに関する基礎文献を収集した。また今日的な教育状況を考慮し,平成20年改訂の学習指導要領(小学校・中学校)及びそれに準拠する教科書(小学校)については,年度始めから検討作業を進めた。その上で,主として文献解釈的な研究を行い,具体的な内容領域として代数領域及び関数領域に焦点をあてて分析を進めた。本研究では,カリキュラムレベルでの俯瞰的な考察を行うことを重視し,その結果,「非通約性に関する概念変容」と「変数性に関する概念変容」に焦点化した。なお,これまでの研究成果は平成22年度に開催された数学教育関係の学会で発表している。
本研究の取り組みの意義を先行研究との関連から述べれば,「非通約性に関する概念変容」は,有理数から実数への展開において本質的であるが,無理数の学習指導に関する先行研究はあまりみられない。また「変数性に関する概念変容」は数字式から文字式への展開や比例から関数への展開の双方にとって重要であるが,こうした領域横断的な構想のもとで企画された研究はあまりみられない。しかしいずれも小学校算数と中学校数学の接続という教授学的問題に深く関わるため意義は大きいと考える。
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