研究概要 |
近年,子どもの学習意欲と問題解決の関連が多方面で取り立たされているにも関わらず,教科教育学レベルにおいて,子どもの動機づけ理論を援用した教授論は確立されていないのが現状である。そこで,本研究では,Deci, E. L.らの指摘する自律的動機づけの考え方を理科授業場面に具現化すべく,自律的動機づけを促進する因子を一連の理科の問題解決過程に即して同定し,整理することによって,子どもの自律的動機づけを促進する理科学習プログラムの開発を目指している。本年度の研究成果と今後の研究の展開については,以下の2点に集約される。 1,理科の問題解決における個人的構築と社会的構築の局面を子どもの記述や授業の発話プロトコルによって分析することにより,「他者の問題解決過程から得られる情報」と「当該の学習内容の構造」の整理こそが,自律的動機づけを伴う問題解決の促進に寄与していることを明らかにした。さらに,このような問題解決過程を長期的に理科授業に導入することで,学習内容の定着が図られることも明らかとなった。今後の課題としては,学習内容の構造の最適化を図ることにより,その構造の学習展開順序による学習効果の違いについても明らかにしていくこととする。 2,上述の成果である,動的な理科授業の分析による自律的動機づけに影響を与える要因の同定に基づき,それらの要因の妥当性を検証するための,個々の要因に限定した,インタビュー形式による個別的な教授活動を構想している。今後の展望としては,これらの個別的な教授活動を実施し,その際の教授者と学習者とのやりとりを分析することで,動機づけ理論を援用した教授論の確立をめざす。
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