研究概要 |
近年,子どもの学習意欲と問題解決の関連が多方面で取り立たされているにも関わらず,教科教育学レベルにおいて,子どもの動機づけ理論を援用した教授論は確立されていないのが現状である。そこで,本研究では,Deci, E.L.らの指摘する自律的動機づけの考え方を理科授業場面に具現化すべく,自律的動機づけを促進する因子を一連の理科の問題解決過程に即して同定し,整理することによって,子どもの自律的動機づけを促進する理科学習プログラムの開発を目指している。本年度の研究成果は,以下の3点に集約される。 (1)子どもの問題解決に影響を与える既有概念の多くは,生得的制約をカバーするために提供されたイメージやモデルの不正確さから生じていたり,偶発的に選択されて表示された情報,あるいは,その情報の提供順が,ある種のイメージを潜在的に植え付けられてしまったことによって生じていたりしていると考えられる側面が具体的に明らかとなった。 (2)制約要因を学習内容に即して特定することは,(1)を整理することにもつながり,それらの整理をもとに,理科学習における概念構築を行わせることができれば,スムーズに,既有概念をより科学的に妥当な科学概念へと変容させていくことができるということが明らかとなった。 (3)(2)のような手続きを授業に設定することで,子どもの学習意欲を高めることが明らかとなった。また,学習内容の構造の最適化を図ることにより,その構造の学習展開順序による学習効果の違いについても明らかにした。
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