本研究は、現地での量的・質的調査により、イギリスの資格制度における「アカデミック-職業ディバイド」の実態とその諸要因を解明することを目的とする。申請者は先に行った質的ケース・スタディによって、学校現場における「ディバイド」について、先行研究では明らかにされていない多様な実態を明らかにした。本研究は質問紙調査による量的データとインタビュー調査による質的データの分析により、先の調査結果の一般化が可能であるのかを検証し、さらにこれまで構造的に明らかにされることのなかった資格制度改革をめぐる「ディバイド」の実態とその諸要因に関する新たな知見を提示する。以上の研究は、イギリスの資格制度研究のみならず、比較教育学における国内比較研究法の方法論の開発においても貢献するところが大きい。 平成22年度においては、3月に調査を行った。この調査では、公営中等学校を訪問し、質問紙への回答を依頼した上で、校長、カリキュラム・コーディネーター、職業資格担当教員、進路指導担当教員等にインタビューを行った。この調査は、新政府の教育政策・施策に対する学校現場の反応について分析し、次年度の大規模調査における質問紙やインタビュー内容の精緻化にとって不可欠なものである。また、学校のみならず、ハートフォードシャーの地方(教育)当局における資格・職業カリキュラム担当官にもインタビューを行い、多角的な視点から現在の資格制度改革の状況に対する分析を行うことが可能となった。 以上の研究成果に加え、イギリスのサリー(大ロンドン区)においてリソースの提供などの面で中等学校に関わりをもつ民間企業の担当者に次年度の調査協力の内諾を得ることができ、渡英の際に直接会社を訪問して、今後の調査計画について協議した。その結果、2011年5月にこの地域の中等学校を対象として、質問紙・インタビュー調査を行うことが可能となった。
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