研究概要 |
本年度の目的は,認知行動療法プログラムの作成と実施,および短期的効果と長期的効果の一部を検討することであった。まず,治療プログラム作成にあたっては,慢性痔痛患者を対象とし,痛みの維持・悪化要因(痛みに対する破局的思考や逃避・回避行動)の修正に焦点をあてた介入に関する研究文献に基づき行った。作成した治療プログラムは,個人形式で1セッション60分を週1回,計4回実施するものであり,構成要素としては,心理教育,セルフモニタリング,リラクセーション法(漸進的筋弛緩法),認知的再体制化,およびエクスポージャーであった。 次に,成人の緊張型頭痛患者(国際頭痛分類第2版の診断基準を満たす)4名を対象(男性2名,女性2名:年齢range 23-68歳)に治療プログラムを実施した。その結果,痛みに対する破局的思考と頭痛に伴う生活支障度は,4名ともプログラム前後で減少し,1か月後のフォローアップ時でも減少は維持されていた。なお,プログラム前の生活支障度水準は,4名全員が「支障あり(軽度~重度)」であったが,フォローアップ時では,3名が「支障なし」,1名が「軽度」の水準にそれぞれ改善していた。一方,逃避・回避行動では,治療プログラム開始時に0点であった1名を除く他3名で減少が認められ,フォローアップ時でも維持された。これまで,緊張型頭痛に対して「痛みの維持・悪化モデル」に基づく認知行動療法は行われていなかった。そのため,本研究で治療プログラムが開発され,一定の効果が示されたことは,予後不良の慢性化予防や改善をもたらす可能性があり,意義が大きいといえる。現在,対象者数を増やして研究を継続しており,今後,数量的解析にて実証的に効果を明らかにするとともに,治療プログラム終了3か月後,6か月後のフォローアップ時点での長期的効果の検討を行う予定である。
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