研究概要 |
本年度の目的は,初年度に開始した認知行動療法プログラムを継続実施し,短期的効果と長期的効果を検討することであった。 成人の緊張型頭痛患者7名を対象(男性4名,女性3名:年齢range23-73歳)に治療プログラムを実施した。その結果,痛みに対する破局的思考と頭痛に伴う生活支障度は,7名ともプログラム前後で減少し,1か月後のフォローアップ時まで継続した5名全員で減少は維持されていた。なお,プログラム前の生活支障度の水準は,7名全員が「支障あり(軽度~重度)」であったが,プログラム後では,6名が「支障なし」に改善していた。また,プログラムを通して生活支障度が「支障なし」に改善した6名は,フォローアップ時(1ヵ月後,3ヵ月後,6ヵ月後)においても「支障なし」水準は維持されていた。他、1名に関しても,3か月後時点で「軽度」へと変化し,6か月後時点では「支障なし」へと改善した。一方,逃避・回避行動では,治療プログラム開始時に0点であった1名を除く6名で減少が認められ,1か月後のフォローアップ時まで継続した5名全員で減少は維持されていた。3ヵ月後,6か月後においてもプログラム前と比較して,低い値のままであった。 本研究結果から,開発した緊張型頭痛患者に対する認知行動療法プログラムは,痛みの維持・悪化要因(痛みに対する破局的思考や逃避・回避行動),および生活支障度に対して,短期的効果と長期的効果の両面に一定の効果を有していることが示された。このことは,簡易的な認知行動療法プログラムでも,痛みの維持・悪化の修正に焦点をあてた介入を行うことによって,緊張型頭痛の維持・悪化の改善に有用である可能性が高いことを示唆している。 予後不良であるとされ,薬物療法などの一般的な治療には反応しない場合が多い慢性緊張型頭痛患者に対する有益な治療プログラムを提唱した点において,本研究の意義は非常に大きい。
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