本年度は、大阪府・京都府を対象とし専門学校の組織運営と教育条件整備における教員の役割について郵送悉皆調査を行い、その結果をまとめた。従来、専門学校調査は、教育内容や生徒の進路等に注目した物が多く、教員および組織運営について調査した本調査は貴重なものといえる。特に、2011年の中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」にあるように、中等後教育段階において職業実践的教育に特化した枠組みの設定や職業教育体系の再編が提起され、専門学校教員の実態と組織運営形態を明らかにし、その特徴を明らかにする作業は重要であり、本調査でもこれらの制度改編に対して示唆となる結果が得られた。郵送調査後に行った訪問調査では、学校の運営者にインタビューを行い、教育内容・組織運営と教員資格要件との兼ね合いなどを聞き取り、専門学校教員が「専門的知識技術」と「属人的能力」(人柄など)の2つの観点から評価され、採用されていることが明らかとなった。またこれらの能力は教科や実習指導の場面だけでなく学校組織運営にも深く関わっていることが明らかとなった。これは専門学校自体が職業教育のために極度に合理化されていており、教員にも学位や教員免許を重視せず、専門学校における様々な業務を担当できる者を必要としているからである。しかし、郵送調査の結果から、専門学校教員の職務は、おおよそ8割が生徒に対する直接指導であることも同時に明らかとなり、インタビューからは専門学校教員には、専門的知識技術と並んで、コミュニケーションに関する能力や青年期の生徒理解に関する能力も必要であり、実際に専門学校教員の適性を有する者は少ないことが明らかとなった。これら従来の枠組みではとらえることのできない専門学校教員の特徴をどのように制度改編に組み入れていくか、という点が専門学校制度改革全体の課題としてフィードバックできるだろう。
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